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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)9868号 判決 1981年3月31日

原告 甲野太郎

右訴訟代理人弁護士 長谷川俊明

同 森達

被告 乙山春夫

主文

一  本件訴を却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  原告は、別紙第一のとおりの裁判を求め、かつ別紙第二のとおり、その請求原因を述べた。

二  被告は、「原告主張の別件が東京高等裁判所に係属中に本件につき審理をすることは反対である。」旨を述べた。

三  原告の主張は、要するに、別件(東京地方裁判所昭和五四年(ワ)第六二九号)において、本件被告を被告とし、請求の趣旨1記載の建物部分(以下本件建物部分という)の所有権に基づき右建物部分の明渡しを求めたが、被告の右建物部分についての賃借権の存在が認められて、原告の請求を棄却する旨の判決がなされ、原告から控訴が提起され、現在東京高等裁判所に同庁昭和五五年(ネ)第二〇三三号として係属審理中であるところ、同事件において控訴棄却の判決がなされるおそれがあり、その場合に備えて、予備的に本訴請求をなすというものである。

ところで、およそ請求について条件を付すことができないものではない(たとえば、同一訴訟内において、売買契約に基づく代金請求を主位的請求とし、右契約が無効と判断される場合に備えて既に引き渡した右契約の目的物の返還請求を予備的請求とするような場合)が、本訴請求のようにこれを別件の請求の予備的請求となすことは許されないと解するのが相当である。けだし、このような形での請求は、前記例示のような場合と異なり、被告の立場を著しく不安定なものとするのみならず別件と本件におけるそれぞれの審理、判決の相互の関係で困難な問題を惹起させることになるからである。したがって本件訴は、不適法というべく、この意味で、本件訴訟は、すでに裁判を為すに熟しており、終局判決をすべきである。

四  よって、本件訴を却下することとし、訴訟費用につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 伊藤滋夫)

<以下省略>

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